東京地方裁判所 昭和54年(ワ)7746号 判決
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【判旨】
二そこで請求原因第3項の事実につき判断する。
被告らが本件契約当時いずれも訴外会社の代表取締役であつたことは当事者間に争いがなく、<証拠>を総合すると次の事実が認められる。
被告らは訴外会社の事業として昭和四五年ころ、千葉県安房郡天津小湊町に別荘地(本件土地)、ゴルフ場、観光公園を造成する総合開発を計画し、用地買収につき地元住民と覚書を交わし、町と折衝する一方、別荘地買受予約者を募集し、約一二億円を集めた。
当時、右計画中本件土地造成については宅地造成として県の許可が必要とされていたが、ゴルフ場及び公園については何らの規制も存しなかつたため、訴外会社は昭和四六年四月に公園の第一期工事に、同年五月にはゴルフ場及び別荘予定地(本件土地)への仮設進入路工事に各着手し、同月三〇日、町に対し別荘地造成に関する事前協議願書を提出した。
当初被告らは県の許可等に約一年、その後約二年で本件土地の造成完了を予定していたが、大規模な総合開発計画であるため右許可を得る手続が当初予定したとおり進行せず、計画全体につき町や県と協議を続けていたところ、初めは観光誘致に協力的であつた地元の住民から造成丁事により内浦湾、鯛ノ浦が汚染されるのではないかとの声が出はじめたため昭和四七年五月一一日、県からゴルフ場を先に完成させて公害の発生しないことを住民に納得させるのがよい旨の勧めと当分の間別荘地計画をはずした他の部分の計画につき協議する旨指示があつたため、訴外会社もやむなくこれに従うこととなつた。ゴルフ場造成工事はこれより先昭和四七年に着手されていたが、昭和四八年二月一三日にゴルフ場造成についても新たに知事の認可を要する等の規制ができたため、訴外会社は新たな規制に従つたゴルフ場を完成させるべく、工事を一時中止し、知事の認可を求める手続をとつたが容易に認可が得られないまま、日時が経過した。
訴外会社は本件土地を含む別荘地の開発とゴルフ場新設、公園の開設を総合的事業として計画し、特にゴルフ場については当初認可を要しない状態であつたため、その工事を進めながら会員を募集し、その申込によつて払い込まれる保証金をもつて事業資金に充てる計画をたてていたところ、右認定の事情からゴルフ場の工事を進められない状態となり、そのため被告らが見込んでいたゴルフ会員募集による収入が得られなくなり、訴外会社は資金計画に行きづまり昭和五〇年一月四日には手形不渡による取引停止処分を受けいわゆる倒産するに至つた。
以上のとおり認められ、右認定に反する証拠は見当らない。
三以上の事実によると、訴外会社の原告に対する本件契約が約定の期日に履行できず、その後なされた和解による債務も履行できないまま倒産することに至つたのは、訴外会社の前記総合開発計画に対する行政庁の指示・対応、地元住民の態度の変化、ゴルフ場新設に対する規制の新設等により、当初の計画より大巾に実現が遅れた結果によるものというべきところ、本件契約をなすに際し、被告らがこのような事情の発生を知り或はこれを予測していたと認めるに足りる証拠は何ら見当らないし、右事情それぞれの内容、性質に照らし、被告らが本件契約をなすに際し、その発生を容易に予測し得たということもできない。
もつとも、前記総合開発を計画しこれを遂行するに当つては、その事業を進行させながら売買予約或はゴルフ場会員の募集という方法で多額の資金を集め、これを事業資金に充てるというのであるから、仮にその事業に支障を生じたときは契約書に与える影響が極めて大きいことを考えるならば、これを遂行する被告らにおいてはその計画を慎重にし、多少の不測の事態には対応し得るよう注意を用いるべき義務のあることは当然である。
しかし、前記各事情については、これを予測することが困難であることは前判示のとおりであり、被告らがこれを予測しなかつたからといつて少くとも重大な過失があつたとすることはできない。
(川上正俊 持本健司 石井忠雄)